乱華Ⅰ【完】




「だからってお前は逃げんのか?」


「…」


「颯人から与えられた任務だろうが」



タクには少しキツいかもしんねぇが、ここで甘やかしたら何も変わらねぇ。
過去は過去であって今じゃねぇんだ。


もう堂々巡りは終わりにするんだろ?




「お前それでも乱華のNo.2か?そんなんだから颯人に…」


「…だよ」


「あ?」



聞こえねぇ…
食器を拭きながら話す俺にタクがボソッと何かを言った。



タクは伏せていた目を俺に向けて、その瞳に哀の色を濃く滲ませた。




「颯人、颯人、うっせぇんだよ!俺がアイツに敵わない事くらいわかってんだよ」


「タク…」


「これ以上惨めにさせないでくれよ…」


「おい!タク!!ちょっと待て…!!」


タクはカウンターをドンッ拳で叩き、俺の静止も聞くことなくそのままゲンを後にした。




「はぁ…やっちまった…」



タクの去った扉に視線を這わせたまま額に手を当て、この先やっかいになりそうなのを感じていた。