〜side.和真〜
繁華街の中心に位置するここは、いい意味でも悪い意味でも活気がある。
そんな一角に佇むのは、でかくはないにしてもそれなりに繁盛する“ゲン”
この看板を掲げたのはおよそ三年前。
出入りは若いのからそうじゃないのまで。
まぁ大半は顔見知り若しくは乱華の関係者だったりするわけだが…
午前11時も過ぎた頃。
カウンターで開店準備をしていた俺の耳に届いた戸の開く音。
「…まぁーたお前は開店前だっつーのに」
「うるせぇな。いいだろ別に」
「それが先代に対する言葉遣いかよ」
なんでこいつはこうも可愛げがねぇんだよ。
その反抗的な口調はいつもと何ら変わりないが、視線の先にいるタクはどす暗いオーラを纏っていた。
フラフラとした足取りでカウンター席に座ったタクは「酒よこせよ」掠れた声で言う。
…つーか今まで飲んでやがったのか、タクは既に酒くせぇ…
しかも寝てないのかクマがすげぇし、帰ってもないのか着てる制服もしわくちゃだ。
こりゃどう見てもなんかあったってわかる。それは多分…
「…ところでお前んとこのお姫さん、やられたらしいな?」
伊達にOBじゃねぇんだよな。
昨日のこいつらの事はしっかりと耳に入ってた。
タクの言う酒じゃなくてレモンを絞った水を差し出す。
もうこれ以上はやめておけという俺の判断だ。


