颯人が携帯で誰かと電話しだしたから、そのうちに新しい湿布に貼り直した。
私は黒のソファーに座ったまま颯人を見ていて
颯人は時々横に流した前髪をうざったそうにしながら、相槌を打っていた。
「行くぞ」
「は?どこに?」
話し終わったらしい颯人は、私が着ていたコート投げたかと思えば手を差し出す。
それを羽織って手を取れば、ソファーから引っ張り上げられた。
颯人は私の質問には答えなくて、無言のまま手を引いて幹部部屋を後にした。
どこに行ってんのかわかんないけど颯人に着いて行けばいつもの黒塗り。
中には勿論梶さんがいて
「…ゲンな」
「はいよ」
私と後部座席に乗り込んだ颯人はそれだけを告げ、早々に瞳を閉じてしまった。
なんだよ。
ゲンに行くならそう言ってくれればいいのに。
何故か握られたままの手は離し辛くてそのままにしていた。
そういえば、ゲンに行くのって今日で二回目だななんて思いながら窓の景色を眺めていた。


