「おい、颯人!」
学校に着くなり颯人は目にも留まらぬ速さで走って校舎の中に消えて行った。
「…どうします?」
その光景を苦笑いで見ていた梶は自分の携帯を取り出して、俺に指示を仰いで来る。
「…一応、修と司にも連絡入れとけ」
「はいよ。あんまり派手にやらせるなよ。俺が頭に殺される」
「…それは心ちゃん次第、かな」
ドアを片手で閉めて携帯を耳に当てる。
梶が運転する車は静かにその場から走りだし、本来の場所に戻るんだろう。
俺も校舎に足を踏み入れる。
普段と変わらない光景だけど、乱華のメンバーだけが忙しなく動き回ってる。
「正宗か!?」
「あぁ。今ん所探した場所言え」
通話口からは走っているのか、呼吸の音とバタバタと足音が聞こえていた。
リノリウム調の廊下を小走りで駆けながら、左右に目配せをする。
授業中って事もあってか廊下にいるのは乱華のメンバーとたむろしている輩だけ。
あのハニーブラウンを確認する事はできなかった。
そのまま突き当たった角を右に曲がれば
「タク」
通話相手が耳に携帯を当てたまま前を走っていて、その隣まで駆け寄る。
「裏庭、中庭、プール、教科棟、人気がなさそうな所は殆ど探した。後は体育館倉庫か体育館裏だけだ」
「…俺は体育館裏行くからお前体育館倉庫行け」


