朝学校に行く準備をしてコーヒーを飲んでいたら、最近のお決まりになりつつある携帯が鳴った。




ディスプレイにはいつもの名前。




それを暫し見つめて通話ボタンを押す。



「なに」


「着いたから早く降りてこい」



要件だけを言ってすぐさま切れた携帯。
受話器からはツーツーと虚しい電子音が鳴るだけ。






なんなんだ、とイライラとしながらも、下に降りればいつもの黒塗り。
その後部座席には見えないけれど奴がいる。




つかつかと歩み寄り乱暴にドアを開けて、



「…あれ、颯人と正宗は?」



真っ先に浮かんだ疑問。
いつもの助手席に正宗はいないし、後部座席に颯人の姿もなかった。




「あ?今日はいねぇよ」


「タクに聞いてない」



私は梶さんに聞いたんだよ!
だけど梶さんは苦笑いを漏らすだけで何も言わなかった。



いつもより広めの後部座席に乗り込めば静かに動き出す車。



空気と化した梶さんと私とタクしかいない車内は、昨日の帰り際些細な口喧嘩をしたせいで、学校に着くまで険悪な空気だった。




…使えないハゲめ。
私の怒りは八つ当たりで梶さんにまで飛び火していた。