例えば石ころの中ににキラキラと輝く宝石が1つだけあったとして


その宝石の輝きに気づかない者はいないと思う。


それは逆の場合もまた然り。


つまり今はそういう状態なんだと思う。



辺りは派手なドレスを着たお姉さんと、絹のようなスーツに身を包んだお兄さん。
客引きだかなんだか知らないけどほろ酔い姿のサラリーマンの腕を強引に引く黒服の男。



ここは妖しいネオンが光る繁華街。
あっちもこっちもピンクな看板が立ち並び、下品な明かりがやたらと目にく。


喧騒で耳を塞ぎたくなる

…ハズだった。普段の私ならば。


ふらりふらりと歩く私を怪訝な表情で見る人達。


私が滑稽なの?
それともジロジロ見るほど、私が面白い?
格好が面白いの?
この場所には似つかわしくない格好だから?



チラと自分の格好を確認してみる。
シャツの上からパーカーを羽織り、下は短パン姿。
明らかにこの繁華街では浮いていた。

だけどそんな事どうでもいいの。

だって気分がいいから。
最高に、ね。



自然とゆるゆる持ち上がる口。


何も気にならない。




「ねぇお姉さん」



勢いよく誰かに肩を掴まれて、行く手を阻まれる。