恥ずかしげもなく泣き喚いたのはいつぶりだっただろう…
あんなにあった虚無感が泣いた事で、消えていることに狼狽したのは言うまでもない。
…ただ、その泣きすがった相手が、タクだってのはちょっと癪だけど。
私はいつから、そんな事ができるような図太い人間になったんだろうか…
薄暗い部屋の一室。ぼんやりと見える影の人物に視線を向けてみる。
あの後、タクのバイクに乗せられてやって来たのは、いつかのあのマンション。
…颯人と一夜を過ごした(らしい)あのマンション。
なんで、颯人の家の鍵をタクが持ってるのかは、疑問だけど。
「…そうだ。心は無事だからお前ら先に倉庫戻っててくれ。…あぁ…そうだよ」
誰と話してるのかはわからないけど、多分乱華の誰かだってことはわかる。
…だって私の事話してるし。
いつもより、幾分声のトーンを落として喋るタクの声がどこか心地よく感じてしまう。
最後に少し不機嫌そうに「あぁ」と呟いて、タクは携帯を閉じた。
そして冷蔵庫から飲み物を持って、私が座るソファーの隣に腰をおろした。


