「…離してよ」



「あ?」




私の言葉なんて聞いていないタクは、私の手を引っ張りホテル街をすたすたと歩いていく。





「離せって言ってんだよ!」



タクの手を振り払うように声をあらげるけれど、タクの手は私の腕をがっしりと掴んでいて、離れる事はない。



どうせ代わりなんだからいいじゃない。
私なんかすぐいらなくなるんでしょ?





肝心な事は言えない私はやっぱり、変わらない。



どんなに変わったつもりでいても、根本は変われていない…



「お前…」



「うるさい!!離して!」



街のど真ん中で悲鳴のような声で叫ぶ私を、今度は好奇な目が見てくる。
頭可笑しいんじゃねぇのって心で蔑んでる。




「…私を梨桜の変わりにしてたんでしょ?」



「おい心…」



「離してってば!!」




あの女に掴まれた腕が痛い。
傷口なんてもう瘡蓋になってるのに、そこが化膿したみたいにヒリヒリする。




…なんで私の頬を暖かいものが伝うのか、わからない。
視界が歪んでまともにタクの顔が見えない…







なんで私はタクの胸で泣いてるのか…わからない。




「お前に話しておきたい事がある」



ただ強制的に引き寄せられた私が辿り着いたのは…





苦しくも暖かい場所。

ひどく落ち着いた。