side.心〜



高くそびえ立つビルの間をトボトボと歩く。



ピンクの看板に下品な明るいネオンは、いつか見たデジャヴな光景そのもの。



男と女が肩を寄せ合いそこに入って行く。
それは恋人同士だったり、そうじゃなかったり…スーツ姿のおじさんと、明らかに制服姿の女子高生だったり。



ビルはビルでもオフィスビルじゃない事くらい、いくらなんでもわかる。



だけどなんでこんな所を歩いているかなんてわからない。



ただ、行く宛なんてない私はこの場所で自分の居場所を見つけるしかないんだ。



「かーのじょっ」



肩に手を置かれたかと思えば、強く引かれて身体が後ろに仰け反った。



「……」



無言でゆっくりと振り返り、その人物を確認する。
私と目が合った男は「当たりー」にっこりと笑いながら呟いた。



…嫌な感じはない。
明るい笑顔を携えて、私の肩にしっかりと腕を回した男。



それを抵抗する事もなく、再び一緒にホテル街を歩いた。



「腹減らねー?」


「…別に」


「マジかー俺減ったんだよねー」



周りのホテルには目もくれず、私の肩を掴みスタスタと歩く男は一言で言えば今時の男。



茶髪から覗く大きな目とその軽薄そうな笑顔が印象的。



「てかさーキミどこの子ー?」


「………」


「俺はねー…」



私の隣で1人話す男は何が楽しいのかずっと笑い、どうでもいい質問を繰り返す。