「どうした?」
「正宗さん!心さんがっ」
「心ちゃんがどうかしたのか?」
やべぇ。
俺の声に颯人もタクも足を止める。
一瞬にして、陽炎の奴らが頭に過ぎった。
走ってるのか、乱れた息遣いが聞こえてくる。
焦ってやたらと早口な電話の相手に「落ち着け」と声を掛けた。
「心さんがいません!」
「…いない?」
「はいっ!トイレに行ったんスけど、あまりに遅くてドアを開けたら…いなくなってましたっ!!」
「お前、どこにいたんだ?」
「トイレの前にいました!」
…トイレの前にいた?
心ちゃんは誰かに拉致されたわけじゃねぇって事か…?
だったらどうして―…
颯人もタクも俺の携帯に耳を傾けるが会話の内容が聞こえないのか、何事かと目で訴えかけてくる。
ちょっと待て。
それを目で制し、再び口を開く。
「何か変わった様子はなかったか?」
「変わった…?」
「あぁ。前後に怪しい人物がトイレに入ったとか…」
「…あっ!そういえば心さんが入った後、女が数人出てきました!」
それだ。
俺は瞬時にそいつらの仕業だと、悟った。
「…特徴は?」
「…えーっと…確か赤茶の髪の女がいました!」
「…わかった。お前はその女探してくれ」
そう言って携帯をブチリ切った。


