乱華Ⅰ【完】






男の話しはこうだった。



自分達は単独で動き、心ちゃんを本間に差し出し陽炎での地位を上げようとした。



その作戦が繁華街と乱華の倉庫を同時に襲い、学校が手薄になった所で心ちゃんを拉致するというもの。



「おい、その心拉致するって奴らはどうなったんだよ?」


「……」


「連絡してみろよ」



胸倉を掴んだまま言えば、ポケットからおずおずと携帯を取り出した男。
その姿は最初とは随分違ってボロボロだ。



まぁ俺がそうしたんだけれど。



携帯を耳に当てた男に近づき耳を澄ます。



「……はい」


その声には聞き覚えがあった。
男から携帯を取り上げ、耳に当てる。



受話器越に“おい、誰も話さねぇぞ”とか“どうなってやがる”とか聞こえる。


おい。まさか…



「……颯人か?」


「正宗?」



なんで颯人が電話に出てんだよ。
俺の言葉に反応したタクが壁から背を離してこちらに近寄る。