「…寒い」


「オメーは寒がりすぎだろーが」


「…うるさい」



寒いもんは寒いんだよ。



あの暴走から数日後。
タクと昼休みに珍しく現れた修と3人、屋上にいたりする。



この広陵高校という所は小綺麗で校舎も教室も割と新しかった。
だけどここに関しては特に何もない、いわゆる普通の屋上。
コンクリートからの吹き返しの風が寒いからかなんなのか、私達3人しかいなくて。



まぁ、あんな視線に曝されないだけマシか、と思う事にしよう。



食後のホットレモンティーを口につけ、ほっと一息。



だけど…



「…寒い」


「はぁ、お前これでも着てろ」



ビュウッと吹いた風は一際冷たくって、同じ言葉を吐く私にタクが顰めっ面しながら、その上着を私に投げつけてきた。



投げんじゃねぇよ!
いつもなら言いたい所だけど、暖かい上着を提供してくれるタクに文句は言うまい。



「寒ぃーんなら戻るか〜?」



タバコの紫煙が風に乗り、遙か彼方へと飛んでいく。
こんな年で環境汚染をやってのける修に「んー…」言葉を濁した。



時計はまだ12時45分。
昼休みは始まったばかり。



どうしようか迷う間にタクの携帯が鳴った。
それに1言2言呟きパタン、携帯を閉じて乱暴にそれをポケットへ仕舞う。