圭はやれやれという表情で立ち止まって、こちらをみた。

正面から向き合うと、圭の整った顔を直視できなくてうつむきたくなる。

それを我慢して、私は圭の瞳を見つめた。

そこにはあの頃、宇宙の本を読んでいた輝きが宿っていたけれど、不安や寂しげな鈍い光もみえた。

圭は辺りをそっと見回して、突然私の耳元に唇を寄せた。

「都が彼氏と別れたら教えてあげるよ」

囁きは吐息とともに耳から体内に取り入れられて、立っていられなくなりそうだった。