「そんなことないわよ」

自分のことだと分かったので、否定しておく。

「圭は選り好みしてるんでしょ。選び放題だものね」

口からは黒い言葉が紡ぎ出される。
今日はいつにも増してひねくれている。圭がいるから?

圭は何も言わず、悲しそうに微笑んだ。

その瞬間、私の中で何かが弾けた。

この顔。
そう、圭のこんな表情を私は高校生になってからよく見ていた気がしていた。