一口、会長が珈琲を飲んで、何も言わないところを見て、私は自分の席に戻る。

初めて珈琲を自分で淹れて、会長に出した時、


『こんなもの俺に飲ませて、俺を殺す気か?』


と言われ、その珈琲は床に水たまりを作った。

会長が、珈琲を床にぶちまけたのだ。

そうして私は、こんな風に会長にいじめられ続けるのかと憂鬱になりながら、珈琲を片付けたのだった。


…そのことを思い出してみれば、さっきのはまだ全然いい方。

何も言わなかったってことは、別に美味しくもなく、不味くもないってことなんだから。


一波、小さな試練が過ぎ去って、生徒会長室には沈黙が訪れる。

書類を片付けている会長の横で、私は自分の机でお勉強。

会長のモノしかなかった生徒会長室に、私の机が置かれたのは私が強制的に会長補佐になってしまった翌日。

会長の豪華机の隣に、まるで今までそこにあったかのように会長のより少し小さめの机が置かれてあった。

まさか、それが私の机だなんて、会長に教えてもらうまで考えてもなかったけど。