「高崎君は、放課後忙しいですか?」


教科書を見ていた彼女が、ふと顔をこっちに向けてそう尋ねた。


髪が揺れて、香りが俺の鼻先をかすめてくる。

机をくっつけていると、結構2人の距離は近い。


「放課後?放課後は部活があるんだ」


「部活ですか。何部なんですか?」


「バスケ。一応キャプテンやってるよ」


そう答えると、彼女の笑顔がますます輝いた気がした。


「バスケ部のキャプテンなんですか。だから、そんなに背が高いんですね」


「まぁ、そうかもね」


中3にして、俺の身長は178ある。

確かに、学年でも背は高い方だ。


「放課後が…どうかしたの?」


気になって、そう尋ねてみた。


「あっ、別に大したことじゃないんです。高崎君が暇だったら、学校を案内してもらおうと思っただけで。部活があるなら、そっちを頑張って下さいっ」


両手を俺に向けて小さく振りながら、彼女は慌ててそう言った。


学校を案内か……。


「いいよ」


「えっ?でも……」


「キャプテンの特権。遅れても大丈夫だけど、その代わりに俺の部活やってるとこも覗いていってよ?」


うちのバスケ部は、市内でも強豪校と言われていて。

そんな中でキャプテンで4番を付けている俺の事を、彼女に見て欲しいと思ったんだ。


「あっ、はいっ。もちろんですっ」


……この笑顔を一番近くで見られる俺は、ホントにラッキーなのかもしれない。