その頃ホスピスの二階、友梨が良く利用する図書室の斜向かいにあるカウンセリングルームでは


狩谷が1人で友梨のカルテをめくっていた。


普段であれば休憩室か仮眠室で休んでいる時間なのだが、数時間前に彼女が発した言葉に興味を惹かれ、医者としての好奇心が疼いていた。


「ミヤマサキユウリとジョウノユウリ、か……」


カルテを診て、クスリと嗤う。


「そしてホウジョウインノオニイサマと、ジョウノカズネ……」


1人の女に、2人の男。


女は1人の男を選んで、選ばれなかった男は彼女を諦めるしかなかった。


最初は、ただそれだけの事であった筈なのに。




なのに、今は……