「芳情、今日はもうオマエ帰れ。条野だけじゃなく、オマエもそろそろ限界だろ」


ふう…と、煙の出ない溜息を吐くと、空也はタバコを途中でつぶして芳情院の背中を叩いた。


「たまには友梨の事忘れてゆっくり休め。あのエロ娘にはオレがついててやっから心配すんな。オマエがいねぇ所で条野にさらわせるような事はしねぇよ。安心しな」




「……代表?僕を……」




「だから、オレはどっちの味方でもねぇんだって。赦すとか赦さねぇとかは別として、友梨が幸せなら、あのセンセイにだってくれてやらぁ。けどな……」


「……」


「あの状態の友梨を、オレの目の届かねぇ所でさらわれちゃかなわねぇんだよ。それが条野だろうが、オマエだろうが」


「……友梨は、条野を、見つめています。条野が怖がらない限り、きっと……」



きっと、すぐ……




「ああ、だからそん時は。話さねぇとな。友梨が受け入れられる、限界までの事は。そうでもしなけりゃ……」




友梨が、夫である芳情院を裏切って和音を選べる筈がない。


例えどんなに、心に膿みがたまっても。


どんなに、心に傷が広がっても。




「呪われてんのは……友梨じゃなくてオマエかもしれねぇな、芳情院」