「きっと……また僕は……オレは、友梨に見捨てられる。選ばれるのはオレじゃない。いつも……奴だ」
左手を隠したまま、芳情院は両手で頭を抱え込む。
「嫌だ……」
小さく、喉の奥から絞り出すような震える声と、ハタハタと、白い床に零れる涙。
「……芳情」
「運命、宿命、いや、もしかすると呪いかな……友梨を手に入れたと思い、その都度奴に奪われる。友梨が奴に惚れるのか、奴が友梨を拐かすのか……置いていかれるのは、いつもオレだ」
「……」
その、芳情院の言葉を、空也は目を細め、まるで自分の胸を痛めるかのような顔で聞いていた。
唇にくわえられたタバコの煙はただユラリと立ち上るだけで、肺の中に入ってはいないようだった。
「友梨を……友梨を、守りたい。愛したい。ただそれだけだ。それだけだった筈だ。なのに!」
「……」
「オレは何故!!」
苦しく、切ない嗚咽。
小さな、震える彼女を。
守れれば、それで良かった筈なのに。
想いを望み、手に入れたのは、器のみの愛。
そして
その愛ですら。
じきに、消える……


