和音がしていた指輪に較べ、自分の指のそれが急にくすんで見えて、空也に見られるのが、恥ずかしくなった。


偽りの、愛の証。


「どんなに、どんなに僕が友梨を想っても……きっとヤツには適わない。愛情の深さで負ける訳ではない、友梨を想う気持ちであれば、間違いなくオレの方が強い。でも、それでも……」


「……それでも?」


空也はタバコに火をつけて、静かに長く、息を吸いこんだ。


「それでも、何だよ?」


芳情院の台詞を待ちながら、ゆっくりと時間をかけて息を吐き出す。


頼りなく、のぼってゆくタバコの煙。


「それ、でも…」


芳情院は短く息を吸い、一瞬息を止めた。


そして、長く、切ない溜息をついてから。




「友梨は、僕ではなく、奴を選ぶ。何度記憶を失しても、何度条野を忘れても。どれだけ注意をはらい、大切に、それこそ友梨のどんな迷いも逃さずに片時も離れずに側にいたとしても、それでも……選ばれるのは、オレではなく、条野だ」


と、言って、美しい眉を歪め、小さく首を振った。