『ミヤマサキユウリ』
が
『ジョウノユウリ』
を消し去りたいのか。
それとも。
『ジョウノユウリ』
が
『ジョウノユウリ』
に戻りたいのか。
友梨の深層心理までは解らないものの、けれどその全ては。
和音への想いに、つながっている。
「普通に考えても、彼の外見や性格に友梨が惹かれるだけの理由はある。けれど、理屈ではなく、感情でもなく、もっと別な……」
「……」
「運命的なもので、惹かれあっている……そんな風に最近思えてならないんです。悔しい、事に……」
「運命論とかってヤツか?オレは、運命なんて変えてやるって思ってるけどな」
空也は時計を気にしつつ、カチン……と、ジッポーの蓋を閉めて、そのままタバコと一緒に上着のポケットに押し込んだ。
------だが、空也のその行動を見ても、芳情院は動こうとしなかった。
それを見て空也は、閉まったばかりのジッポーとタバコを取り出して、もう一本だけ吸う事を決意する。
芳情院が空也の行動を読めないなんて、普段であればありえない事なのだ。
「……続けろよ?」
空也の言葉に、芳情院は左手薬指の指輪を右手で覆った。


