フッ…と、芳情院は軽い自嘲。
「鳥籠に閉じ込めたら……大人しくなりそうか?友梨ちゃんは」
「そう……思っていた時期もあったんですがね。まだ、そうだな。あの頃なら間に合ったのかもしれない。条野から引き離して、深山咲に閉じ込めてしまえば」
「……いつよ?」
「2人が、高校生の頃かな。友梨に悲しい顔をされるのが、嫌われるのが怖くて……期を見誤ったな」
「……」
「琴彌さんは友梨が2年の夏に無理矢理にでも深山咲に連れ帰るべきだと言っていた。それがあの子を守る一番の方法なのだと。家元である前に母親である彼女の意見は正しかった。踏み切れなかった僕の……自業自得ですね」
「芳情、余裕あるように見えたけど。条野の方が、あの頃は焦ってた気がしたけどな」
カチ、カチン リズムをとるように、響く金属音。
空也は日本で友梨の回復を願う妻の名前を聞いて、ほんの少しだけ辛そうに目を細めた。
「余裕、あるように見せなきゃやってられないじゃないですか。九つも年下の恋敵相手に、キリキリしろとおっしゃいますか?この僕に?」
呆れたような顔をする芳情院。
空也は、ニヤリと笑うと。
「は、そりゃ無理か。オマエ性格わりぃもん」
と、言って、さらに。
「……あの頃、か」
と、苦笑い。
そして。
その空也の苦笑を見て、芳情院は。
「ええ。難しいのかもしれませんね。今は、もう」
と、言って知性を隠せない瞳を閉じた。
どんなに力で、ねじ伏せても。
どんなに神に、祈っても


