「条野は、全て悟って、友梨を受け入れてくれたんじゃねぇかな」
「……」
「けど、よ」
口を閉じた芳情院に、空也は苦笑しながら言葉を投げる。
「オレは別に、条野の味方って訳でもねぇんだよ。好きな女を抱きてぇなんて、男なら当然だし……オレもほめられる様な恋愛して来たとは言えねぇしな。まして芳情は友梨の事、条野とは違う意味で大切に守ってた訳だからよ」
「代表……もう、やめて下さい」
強く目を瞑る芳情院。
伏せた瞼の裏にはあの夜の友梨の泣き顔が焼き付いている。
どんなに強く指でこすっても、こすっても……消せない、消えない、苦い記憶。
「なあ、芳情」
再び短くなったタバコを最後まで吸ってから、空也はまた丁寧にタバコを灰皿にあてて押しつぶした。
そして、さらにタバコを取り出そうとし、けれど時計を見て止めると、カチンとジッポーの蓋を閉じて。
「オマエこの先、どうしたい?」
と、芳情院に問いかけた。
「……どう、とは?」
芳情院は、目を伏せたまま。
「ん?ああ……友梨ちゃんとよ、どーしたい?このままオママゴト続けるか?ずっと、一生」
「……皮肉、ですか」
「皮肉じゃねぇよ。本心だ。それが友梨の幸せなら一つの可能性としてあるだけの話だろ」


