空也はタバコの煙を、まるで溜息をつくかのように吐き出した。
そして、静かに。
「そりゃ、まあ……恋敵なんて、好きになんのが難しいんじゃねぇの?ただ、条野は」
と、言って芳情院を見た。
「……?」
「条野は、芳情の事、嫌ってはいなかったぜ?少なくとも」
「……代表」
「オマエが友梨を、汚すまではな」
「代表、あれは……ッ!」
「んん?ああ、実際にやってよーが、やってなかろーが関係ねぇよ。まあ、どこまでの行為だか、父親としちゃあ聞きたくもねぇしな。友梨が止めなきゃ、オレ殺してたし、間違いなく。オマエの事」
はは。
と、まるで笑い話のようなノリで、空也。
芳情院は、たまらずに膝の上で拳を握りしめ、辛そうに目を伏せた。
「条野に大切に大切に守られてきた友梨ちゃんにとっては、自分を消し去りたい位ショックな体験だったんだからよ」
「……僕は」
「コトが済んだのかどうかすら、わかんなかったんじゃねぇの?あの娘には。正確な記憶がないって泣き叫んでたし」
「僕は!」
「条野には何も言うなって口止めして、深山咲から追い出したけどよ」


