記憶混濁*甘い痛み*2


「はは。まあ仲良くしよーぜ。こんな時以外仲良くなれねぇだろ、オレ達は」


「いい迷惑ですね」


ガラスの扉から覗いている守衛にウィンクをされて、軽く手を握り合う素振りを見せる2人。


人懐っこい顔の守衛は2人の態度を見て、ショボンとした顔になった。


「寂しそうな顔してますよ代表」


「だから何だよ、いーじゃねぇか。芳情もっと笑えよ。オレばっか迫ってるみてぇじゃねぇか」


「……これでも精一杯笑ってます」


「ノリのわりぃ奴だなぁ、条野なんてオレの言うこと、何でも聞くってのによ」


「僕は奴よりプライドが高いんです。好きな女の為とはいえ、代表の靴を舐めるのは御免こうむります」


「さすがに条野もそこまではしねぇよ。いや……でも奴は友梨の事になると良くも悪くも吹っ切れるからな……ない事もないかもな」


空也はそう言うと、タバコを深く吸い込んで、眉をしかめた。




何か、言葉に出す以外の事を考えている。




「僕は奴のそういう所が嫌いです」


守衛用の作り笑いを消して、芳情院。


空也と繋いでいた手を離して、左手の結婚指輪へと視線を落とす。


「……嫌いです。昔から、ずっと」


「……」