「和音先輩、私……!今、少し前の記憶がないの  私……」


と、言って、カタカタと震え出した。


和音は右腕で友梨を抱きしめ、利き手の左手で友梨の頭を撫でると。


「うん。でも、今、オマエは此処にいる」


と、言った。


「和音、せんぱい?」


「いるだろ?今、オレと話をしているのは、オマエだろ?友梨?」


「……でも、私また……!」


「大丈夫だ」


「和音先輩?でも……!」


「今までの友梨の記憶障害のキッカケが、オレが把握しているものだけならば、もう、この先、記憶障害は起こさせない」


「……!」


「もう、オマエを『どこにも逃がさない』から、安心しろよ」


そう言って、和音は友梨の頬を両手で包む。


友梨は和音の手の上に、自分の手を重ねて。


「……ほんと、に?」


と、言って、不安そうな顔。


和音は優しく笑って見せると。


「ああ、約束する」


と、言って、友梨と額を合わせた。


「オレの言葉じゃ信用出来ない?」


クスクスと、あえて明るい素振りで、和音。


友梨は、少しだけホッとしたような顔になり。


「いいえ、和音先輩が……側にいて、そう、言ってくれるなら……」