「……きょう……なん、にち?」


友梨は不思議そうな顔で、自分の手を、ゆっくりと握ったり閉じたりしている。


「なんにち、なんにち……」


子供のような、友梨の声。



……この、状態は。


和音が知る限り過去二回。


一時的な、幼児退行。


「友梨?みやまさき、ゆうりちゃん?」


和音は、友梨から手を離さないようにしながら、彼女の正面に移動すると、両手を握りしめる。


そして、優しく。


「ゆうりちゃんは、オレがだれか、わかるかな?」


と、言って、友梨の瞳を見つめた。


すると、友梨は。


「……しってる」


「しってる?」


「ゆうりを……ううん、ゆうりの、すきな……ひと?」


と、言って、和音を見つめ返した。


和音は頷くと。


「友梨?オレの名前は?」


と、言って、ぎゅっと両手に力を入れた。


「……!」


友梨は強く握られた手の痛みに一瞬ビクリとし、目を見開くと。


「……和音、せんぱい?」


と、言って、視線を泳がせた。


和音は、そのまま友梨の手を握りしめ。


「うん、そう。友梨ちゃんの大好きな、和音先輩。友梨は今、どこにいるの?」


と、問いかける。


すると友梨は、ハッとした顔になり、椅子から立ち上がって和音に抱きつくと。