記憶混濁*甘い痛み*2


「高校時代……まだ、付き合う前に。友梨が、オレに言ってくれた言葉、覚えてるか?」


抱きしめていた腕をといて、和音は両手で友梨の手を握る。


友梨は、キョトンとして。


「いつ頃、ですか?」


と、問いかける。


「オレが高2友梨ちゃん高1……保健室で、オレは友梨を追いつめた」


「……保健室」


「友梨は怪我をして血が止まらなくて、それをいい事にオレはオマエの手を握ってたね」


クスクスと笑う和音。


友梨は、ああ!と、呟き。


「あの頃の和音先輩、いじわるでしたわ」


と、軽く頬をふくらます。


「当然だよ。このオンナ、オレの事好きなクセにメンドクセーなぁって、思ってたから」


「そんな風に思ってらしたの?ショックですわ」


友梨は和音から手を離そうとするものの、和音はそれを許さない。


「あの時オレは、苦しかったよ?」


「和音先輩?」


「友梨が。オレの罪ごと愛し、認め、その罪が赦されるべきものではなかったとしても、友梨だけはオレを愛し、共に裁かれる。そう、言ってくれたから」


「……」


「そこまでオレを思うのに、また逃げるのかよって、切なくて、苦しくて、たまらなかった」