「……友梨?何?」
優しく友梨の頬を撫でながら、和音。
もう片方の腕で、友梨を強く抱きしめる。
友梨は、ほんの少しだけ顔を上げて和音を見ると。
「私、今……ねえ、とてもとても幸せなの。でも……こんなに幸せだと、いつか……罰があたる気がする」
と、言って、一瞬だけ幸せそうな顔を曇らせた。
「……友梨?」
昔から。
友梨は、自分の幸せには臆病だ。
伝統を守る家に生まれ5才で後継者争いの波に巻き込まれ。
愛されてきたのに、愛され方を知らず。
優しくする度、いつも泣きそうな顔でオレを見つめていた。
幸せは。
受けるのではなく。
あたえ続けるもの。
幼い頃、後継者争いの恐怖から彼女が救いを求めたキリストは、彼女の中に安定をもたらすと共に、幸せになる事への恐怖心を植え付けた。
歪んだ、心に現れた救世主は。
芳情院に守られ、和音に愛されても。
消えることはなく在り続けている。
「友梨が受ける罰なら、オレが受ける」
「和音先輩?」
和音の言葉に、友梨は目を丸くして驚いた。
可愛い瞳に、ぱちくりと瞬き。


