記憶混濁*甘い痛み*2


その状態の友梨に。


和音との現実を突きつけ、表情のない瞳から涙を流させたのは、空也だった。


悲鳴を上げ、身体を震わせて座り込み、頭を抱えて泣き叫ぶ友梨を抱きしめて。


優しく諭すように、空也は言った。




『オマエが芳情を選んだら、条野はオマエではなく、自分を責める。


オマエがオトコに選ばれるな。

オマエが、オトコを選べ。


幸せにしてもらおうなんて思うな。

オマエが条野を幸せにしてやれ。


アイツはオマエを見れば全て理解する。

けど、オマエの口からは何があったのかは一切話をするな。

条野は必ず何も言わずにオマエを受け入れるから、オマエも何も言うな。

それが罪ならば、その苦しさがオマエが受ける罰になる。


今すぐ条野の宿泊してるホテルに行って

ホントの意味でオンナにしてもらえよ

……で、な?

もうウチには帰ってくるな。


オレが勘当することで、深山咲友梨は自由になる。

条野友梨として、一生楽しくやりやがれ』




その言葉に。


その愛情に。


友梨は泣きながら頷いて、空也から渡された選別代わりの財布と、大切な絵本を一冊だけ抱えて、和音の胸へと飛び込んだ。