その状態の友梨に。
和音との現実を突きつけ、表情のない瞳から涙を流させたのは、空也だった。
悲鳴を上げ、身体を震わせて座り込み、頭を抱えて泣き叫ぶ友梨を抱きしめて。
優しく諭すように、空也は言った。
『オマエが芳情を選んだら、条野はオマエではなく、自分を責める。
オマエがオトコに選ばれるな。
オマエが、オトコを選べ。
幸せにしてもらおうなんて思うな。
オマエが条野を幸せにしてやれ。
アイツはオマエを見れば全て理解する。
けど、オマエの口からは何があったのかは一切話をするな。
条野は必ず何も言わずにオマエを受け入れるから、オマエも何も言うな。
それが罪ならば、その苦しさがオマエが受ける罰になる。
今すぐ条野の宿泊してるホテルに行って
ホントの意味でオンナにしてもらえよ
……で、な?
もうウチには帰ってくるな。
オレが勘当することで、深山咲友梨は自由になる。
条野友梨として、一生楽しくやりやがれ』
その言葉に。
その愛情に。
友梨は泣きながら頷いて、空也から渡された選別代わりの財布と、大切な絵本を一冊だけ抱えて、和音の胸へと飛び込んだ。


