どんなに、願っても、願っても。
汚れた自分の記憶も。
愛している筈の芳情院への憎しみも。
忘れた筈の和音への想いも。
どうしても。
友梨の中から消えず。
そうする内に。
心のバリアが崩壊し。
友梨は。
記憶の裏に逃亡する方法を覚えた。
完全にそちら側に行かない為の。
防衛本能。
誰も傷付けない。
誰も傷付いてない。
みない。みない。みない。
イエ。
違う。
最初から。
何もなかった。
それで、良かった。
それが、良かった。
和音に、汚れた自分は見られたくなかった。
だから。
それで、良かったのに。
なのに。
和音を想い恋焦がれる、欲張りな自分が。
たかだか5日で、心にパックリと深い深い傷を作り、偽りの心の安定は、友梨の表情を消した。
現実感の欠乏。
現実感の喪失。
そんな風に分類される状態に、友梨はなり。
誰にも解らないように。
静かに、心を閉ざした。


