記憶混濁*甘い痛み*2


どんなに、願っても、願っても。




汚れた自分の記憶も。


愛している筈の芳情院への憎しみも。


忘れた筈の和音への想いも。




どうしても。


友梨の中から消えず。


そうする内に。


心のバリアが崩壊し。


友梨は。


記憶の裏に逃亡する方法を覚えた。


完全にそちら側に行かない為の。


防衛本能。




誰も傷付けない。

誰も傷付いてない。

みない。みない。みない。
イエ。

違う。

最初から。

何もなかった。

それで、良かった。

それが、良かった。




和音に、汚れた自分は見られたくなかった。




だから。

それで、良かったのに。


なのに。


和音を想い恋焦がれる、欲張りな自分が。


たかだか5日で、心にパックリと深い深い傷を作り、偽りの心の安定は、友梨の表情を消した。




現実感の欠乏。


現実感の喪失。


そんな風に分類される状態に、友梨はなり。


誰にも解らないように。




静かに、心を閉ざした。