気にならない、訳はない。
「エリザベスは……もう、長くはないんですよね?狩谷さん」
と、芳情院。
友梨の話を聞いていると、今一番話題にあがるのは、エリザベス……リズだった。
芳情院はリズの病名を、すぐに狩谷に聞きに言った。
本来病院には守秘義務があるが、友梨の為に、無理にでも聞きたかった。
もしかすると、今回の事件で『子供が産めなくなってしまったかもしれない』友梨に、出来ることなら、愛する者を与えたかった。
本来であれば、まだ乳飲み子の養子を探すべきなのだろうが、一刻も早く、友梨の気持ちを和音から他に向けたかった。
それが、自分でなくともかまわないと思った。
奴で、ないなら。
もしかしたら。
他の、オトコだとしても。
けれど、聞いた結果。
リズは、悪性リンパ腫である事が解った。
それも。
既に、末期。
いつ『もしかしたら』がきても、おかしくはない程の。


