「伝えない…つもりだったのに…」
「神前…」
「いいんです…!
分かり切ってる答えなんて聞きたくありませんから…」
神前は俺から視線を逸らして切なそうに床を見つめる。
「…お前は、分かり切っている答えは聞かないのか…」
「へっ…?」
「例えば…
1+1=2…なんて答えは分かり切ってる。
でもな、それは数字での問題だ。」
俺は神前の頬を両手で包んで自分の方に向けた。
神前は目元を真っ赤にさせて、唇を力強く噛んでいる。
「痛いから噛むのやめろバカ…」
「んっ…」
俺は親指を神前の唇に当て噛むのを辞めさせた。
「人間での1+1ならいくつもの答えが出てくるんだ。
皆感じ方や、考え方が違うから運命もまた違ってくる。」
「みな―…」
「俺たちは人間としての1+1なんだ。
…だから俺が出している答えはお前が思っている決まった…
分かりきった答えなんかじゃない。」

