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男性の話に出てくる女性は、きっと私のことだと思う。それを知っていて私に話しているかはわからないけど、男性は尚も、話を進めていった。
「女は自らを洞窟ごと封じ、そこから湧き出る水に、己の力と血を注ぎ込んだ。その水が流れる川岸には、花が咲くようになってな。これに残った命華が手を加えることで、我らが口にする花が作れた。
――だがこの時、既に更なる呪いが始まっていたのやもしれぬ」
なにが起きたのか、私は想像がついてしまった。
そう。こんな簡単に、異変が終息はずない。根本的な解決をしてないのに、この人たちは……。
「それから、どれだけ時が経ったのか。――――破ったのだよ。女との約束をな。命華を玩具とし、奴隷のように扱う彼等だけでなく、我らにも更なる呪いが襲うことになった」
自業自得だな、と怪しく笑う男性。
命華を苦しめた人を、この人は本当に恨んでいるようで。話の最中、何度も恨めしそうに、どこか遠くを睨んでいた。
「もう、自分たちを助けてくれるものはいない。残った命華も、あの女ほどの力を持っておらぬし、手をかそうとも思わなかったようだからな。死に怯えた者たちは、命華の扱いを今更のように同等とし、保護することさえした。
だが、呪いを止めることは出来ず、遅らせるのがやっとな状態の時――再び、女は現れた。姿こそ違えど、その髪色は、赤の命華の証。白銀に、紅を足したような、輝かしい色をしていた」
思い出すのは、草原で見た女性の姿。
確か彼女は、女王だって言ってと思うけど。
「だから我は決意した。女を死なせるわけにはいかぬ――ずっと、ずっと生きてもらわねば。他の者には渡せぬ。無垢なまま、穢れの無い存在でいてもらわねば」
笑ってるのに……その表情は、とても嫌悪に満ちている。歪んだ感情が、どず黒いモノとなって、私の心に伝わってくるような、とても気分の悪い感覚に囚われていた。
「このような扱いをした罰を、我らは受けねばならぬ。お前も――そう思うであろう?」
男性の言い分も、わからないわけじゃない。償ってほしい気持ちはあるけど……そんなことをしても、なんの解決にもならない気がする。