「では、貴方はこの有様を、ただ傍観していたというのですか?」


 その問いに、奥の者は月灯りが照らす場所まで出て来る。


「半分当たり。――で、そういうお前はなんなの?」


 にやり口元を緩めるその者は、少年の姿をしていた。


「そっちの質問に答えたんだ。オレのにも答えて当然だよな?」


 笑顔で。けれど威圧的な眼差しを、少年は男性に向ける。


「――――いいでしょう。私は、簡単に言えば使い魔。ですが、そこにいる者たちとは違う」

「へぇ~。アンタも使い魔なんだ? じゃあなに。正体はこーいう獣なの?」

「答えてほしければ、私の質問に答えてからにしてもらいましょうか」


 途端、場の空気が重くなる。

 それを感じたのか、少年は一瞬、眉をひそめた。


「つまらないやつ。ま、別にいいけどね」


 目的は果たしたし、と少年は片手を上げる。すると、獣たちは一瞬にして、その場から消え去った。


「言っておくけど、邪魔したらアンタも〝アレだから〟」


 残った肉片を指差し、少年は怪しい笑みを見せた。


「それは私も同じこと。貴方が障害となるなら――容赦はしない」


 対して男性は、鋭い眼差しを少年に向ける。

 輝く男性の瞳。それを見て、少年は好奇の眼差しを向けた。


「へぇ~。左右違う色、か。青と緑。やっぱり、力もそれなりに強いってこと?」

「――――試してみるか?」


 いつでも戦えると言わんばかりの男性。でも少年にはそんな気が無いのか、今は遠慮しとく、と片手をひらひらさせる。


「ムダなことはしない主義なんでね」


 そんな言葉を残し、少年はその場から消え去った。後に残った残骸を改めて見た男性は、重いため息をはく。


「処理は……しなければならないだろうな」


 せめて死後、安らかになれるよう。

 残った亡骸を、男性は出来るだけ集め、弔うことにした。