松田エリカ

27歳 商社のOL

「おはようございまーす、先輩」
と鼻にかかる声で挨拶をされたが、
振り向かないでパソコンの画面を見つめるエリカ。

エリカにとって、会社なんて腰掛け状態だと思っていた新入社員の頃は。
後輩の子が増える度に、私の心は冷たいようになっていく、と
思っていたけれど、比べても学生時代から後輩には冷たくしていた。
女には女の敵がいるだけ・・・
例え心許していたって、男の一人でもその輪に比べれば、
みんな媚びを売ってばっかり。
女の世界は退屈なの。

エリカは真剣にネットショッピングで買いたいバッグの
値段を比較していた。
新入社員の頃は一番華だったわ。
仕事ができなくっても何とかなったし、
毎日のように男性社員からのお誘いがあって選び放題だった。
月曜日はイタリアン、火曜日は中華、水曜日は日本料理
木曜日はワインバー、金曜日は本命とデート。

3年付き合った彼からふられてしまって、なんとなくの
空間ができてしまい半年、
同じ会社の元彼は私を置いて上海支社に転勤してしまった。

エリカは彼が海外勤務の希望なんて知らなかったし、
私に相談してもくれなかった腹いせには、
私は欧米やヨーロッパだったらついて行ったのに、と周囲にこぼしていた。
後輩からの合コンのお誘いになんてプライドがあるから乗れないと思いつつ、
合コンで知り合ったひかりが誘ってくれた合コンに少し期待をしている。


ジェルネイルで長く伸びた爪に
ラインストーンやリボンモチーフがキラキラしている。
男性には常にかわいらしく思われたい。
ピンクは大好きだけれど、全身は今更着られないと思っている。
和えてサーモンピンクのアンサンブルにパール風のビーズがキラキラ
ほんのり押さえたゴールド風のプリーツスカートに
ファーがついているスエードベージュのブーツ
今日は白いファー付きのコート

女の子の白いコートは最強
いつだってキラキラしていなきゃね、
誘ったことないの

エリカは自分の見せ方をよく分かっているつもりでいる。
バッグの中には常にハンカチが2枚入っている。

ひかりは自分とは同じようなタイプじゃないから、
敵にはならないと信じている。