「ア、アルテミアのことですか!?」

僕は、戸惑いの声を上げた。

異世界に来ることになったのは、夢の中で絶世の美女であるアルテミアに告白されたからである。

(一緒になって)

その告白が、一緒に戦えとは思ってなかったけど。

美女で、最強に強く…最悪に、性格が悪い。

ブロンドの悪魔。

それが、彼女の通り名である。

だけど…僕は、それ以上に、アルテミアの直向きさを知っていた。

(お母様のように強くなりたい!)

カードシステムをつくった勇者である…母親。

そして、魔物の頂点にいる…魔王である父親。

その狭間で揺れる…少女。

僕は…アルテミアが怖いし、異世界に来て戦うのは、嫌だ。

だけど…心底嫌いではない。

「フッ」

悩む僕を見て、キャロルは笑うと、空を見上げた。

「あたいは、剣士だ。それも…自分で言うのも、何だがな。優れた剣士だ。女だてらにな。だからこそ、男からの妬みもあった」

キャロルは目を細め、

「しかし、戦いは命の取り合いだ。女だからと考えている暇はなかった。あたいは、敵を倒し…ポイントを増やしていた。だけど…戦いが終わり、町に戻ると…妬みや陰口は増えていった」

キャロルは振り返り、僕を見た。

「女で強いことは、悪いのか?女が生き残ることは悪いのか!そんな時、あたいは戦いの中で、初めてあたいを認めてくれるやつに出会った。そいつは、あたいを女としてだけでなく、剣士として認めてくれた…」

キャロルの表情が一瞬、優しさで溢れたが…次の瞬間、憤怒に変わった。

「そいつをだ!」

キャロルは抜刀した。

剣先は、僕の眼球の数センチ前を通過した。

「傷付けたやつがいる!」

キャロルは、剣を鞘にしまった。

「それが、アルテミアだと」

僕は、微動だにせずに、キャロルを見つめた。下手に動くと危険だと本能が告げていた。

「ああ…」

キャロルは僕に背を向けた。

「その前までは、アルテミアにシンパシーを感じていた。どこか似た者同士のようなな」

キャロルは、微かに笑っていた 。