赤い狼と黒い兎



根負けした青夜がとぼとぼと椅子に戻って行った。

それを見届けたあたしと亜稀羅は噛み殺していた欠伸を溢した。



「大体さぁ…もっと用件のあることないわけ?」

『ねむ……』

「大事なことだろう!」

『…だから、関係ねーし』

「先代」

『黙れ禿げ。こっから突き落とすぞ、あ?』



じろりと睨めば、唯兎の後ろに隠れる青夜。



「まぁまぁ、馨ちゃん…」

『……』



苦笑い気味に言う唯兎に免じて、睨むのをやめた。



「馨…」



今まで、カタカタとパソコンを弄っていた琉樹がそうあたしを呼んだ。



『琉樹?』



眉間にシワを寄せ、パソコンを睨む琉樹にあたしは近づいた。

それによってmoonのメンバーもやってくる。



「!?、何これ…」



パソコンの画面には、あたしがmoonを抜けたことが書かれていた。

…半分でっち上げの半分本当。



「“WolfMoon黒狼が脱退したワケ”」

「…“男が原因で脱退した”…だぁ?」

「“サツと連携し人殺しをしていた”…はぁ??」



……根も葉もないようなことが書いてあり、メンバーも眉間にシワを寄せた。



「…おい、誰だよこんなん書いたやつ」

「特定出来ない。不特定多数の人間が書いてるからな。…そのリーダー格を探そうというのは少し至難の業だ」

「消せないの?琉樹」

「……無理、だな。消せたとしても、また作るだろうよ」