赤い狼と黒い兎



目尻を下げて笑う瑠宇に亜稀羅は言った。



「まぁ、せいぜいクビなんないよう頑張って」

「お前そんなこと言う?もう飯作れねーよ?」

「マジ?それはあれだなぁ…」

「あれってなんだあれって」

『素直じゃないね、亜稀羅』

「馨に言われたくなーい」



確かに…と同意してしまった自分がいた。



「これからは馨に作ってもらえ」

「…馨作れるっけ?」

『失礼だね、亜稀羅。亜稀羅よりは作れるから大丈夫だよ』

「お前がまだちっこい頃なんか、馨が頑張って作ってたからなぁ…」



あー、懐かし。とか言いながら昔の思い出に浸る兄貴。



『……失敗しまくった卵焼きを亜稀羅に食べさせた』

「何ちっさい俺に嫌がらせしてんだよお前!」

『…だって上手に作れないからムカついて…』

「ちょっと、マジ嫌がらせだろそれ」

『……まぁ食えなくはなかったからさ』

「そういう問題じゃないよ?馨ちゃん」



こんな楽しい食卓が、あと数日もすれば消える。

そう思えば、少しだけ寂しくなった。



「今日の飯は?」

「オムライス」

「ガキか」

『オムライスの上の旗』

「あ〜…それはねぇわ」

「ガキかッ!?」

『王道』

「…子供の王道ね」



くだらないやり取りをしているうちにオムライスが出来た。



「いただきま〜す」

『…ます』

「どうぞ」



相変わらず、美味しい。