赤い狼と黒い兎



あたしは椅子から立ち上がり、ポケットに手を突っ込んだ。



『…お前、総長だろ。嫌いとか気が合わないとか、てめぇが決めんな。世界はおめぇ中心に回っちゃねぇんだよ』

「っ!………。」

『亜稀羅、帰る』

「おーう」



背もたれに腕を置いて、頬杖ついていた亜稀羅に言った。



『じゃ、まぁ…同盟の話は加奈子と青夜に任せる。あたし関係ないしね。』

「俺はねー……何でもいーや。みんながいいなら」



こいつ投げやりだな。絶対面倒くさいんだ。

音楽室を出て、グラウンドへ出た。

同盟を組むことでどれだけの利益がこちらにあるか…。

それをよく考えるんだな。ま、あたしに口を出す権利なんてないけどね。



「なぁ、姉ちゃん」

『何急に』



バイクを引っ張り出している亜稀羅を見る。

亜稀羅のバイクは少々でかめで、黒を基盤に朱雀が描かれている。

あたしのバイクも目立つが、亜稀羅のバイクも一際目立つ。



「…もうmoonに戻る気はないの?」

『……無いよ』

「…そっか」

『戻れないよあたし。みんなと一緒にいるのさえ、ダメなのに。』

「そんなこと無いよ?みんな馨が居なくなる事を一番恐れてる。だから…居なくなるのだけは、やめてね?」



目尻を下げて、苦笑い気味に笑う亜稀羅。