赤い狼と黒い兎



にこりと笑った加奈子に、春架は真顔で



「嫌です。」



と言った。

真顔で。ほんとに、笑うも怒るもしないで真顔。



「……」



それが逆に加奈子を驚かせたらしい。



「いやぁ〜、即答されるとはね!」

「…春架が反抗期…!」

「オカンか、お前」



青夜は呆れてため息をつき、加奈子ももうそろそろやめた方がいいと悟ったんだろう。



「で、唯兎は?」

「え、俺?」

「…お前、総長だろ」



さっきよりも呆れ気味で、頭を抱えた。



「そうっすけど…」

「春架みたいにイヤってか?」



にやっと笑った青夜に、唯兎はきょとんとした。



「や、違います」

「?…ならなんだ?」

「俺は別に同盟組む事に意見はないんで。みんながいいならそれで」



そう言って、笑う唯兎。

――どこか、惹き付けるような笑顔。

総長としての威厳はないが、この多らかな人柄が他人を引き寄せるんだろうか…。

まったく謎な男だ。



「……変わらないねぇ、お前も」



驚いた表情から苦笑いへと変える青夜。

加奈子もそれには同意見らしい。



「てか、あんた達だけよ?仲悪いの」

「そーそー。何でだよ?」

「こいつらが先に喧嘩売ってくるんすよ!」

「はあ!?今の聞き捨てならない!」

「そっちが先じゃない!!」