赤い狼と黒い兎



あたしはドアノブに手を掛けようとし、そこでピタリと動きを止めた。



「う、わ!?」

「馨?」

『……。』



何か、いる…。

あたしは春架たちを後ろにやり、息を吸った。

…まあ、いいストレス発散になるだろう。

ぐっと足に力を込め、振り上げ屋上のドアを蹴り破った。



「うわあ!!!!」

「ぎゃああっ!!!」



最後の悲鳴は加奈子があげたものだ。

女としてどうかと疑うけど…。

屋上にいる人間誰もが驚き、そこを凝視した。

……いや、加奈子たちじゃなくてあたしか。



「びびっ、びっくりしたぁ〜!」

「ドア蹴り飛ばすなんて、何考えてんのよ!!」



2人は腰を抜かして、地面に座り込んでいた。



『…盗み聞きなんて、いい度胸だなおめぇら…』

「!、なっ何言ってんのよ!ねぇ、青夜!!」

「そっ、そうだよ馨!たまたま通り掛かっただけであって…!」



目が泳ぎまくってるけど…。

あたしは「へえ…」と呟き、腕を組んだ。



「「………。」」

『……あたしに言わす気か?』

「「すいませんでした…!!」」



バッと頭を下げる2人に、あたしはにこりと笑った。



『今日の相手…、青夜に頼もうかな』

「え゙…」

『何だ?…加奈子でもいいんだぞ?』



クスリとほくそ笑んだ加奈子を見逃さないようそう言った。