赤い狼と黒い兎



「お前…マジで何なんだよ!?殴っても殴っても避けて、一発も当たりも掠りもしねぇ。…それに俺が今まで見てきた女とは、何かがちげぇ…」

『へぇ…。その何かが詳しく知りたいなあ…?』



顎に手を当て、口の端を吊り上げた。



「っ!…上手く、言えねぇけど…」

『うん』

「……オーラ?っつーのがちげぇし、」

『…ほぉ』

「俺らんこと、知らなかったし…」



…興味なかったし。



『兄貴が朱雀を抜けてからのあとは、知らなかった。…いろいろあったからな』

「?…お前、何者?」



何度朱雀に同じことを聞かれたんだろう、あたしは。

もういい加減飽きたし、うざいからいっか。



「あ、馨からメンドクサイオーラが…」

「…馨、絶対亜稀羅にボコられるな」

「や、多分これは1時間正座説教だね!」

「「お前らKY過ぎ……」」



丸聞こえなんですけど、絶対隠そうとしてないよなそれ。

まっ、いーや。



『何者、ねぇ…?別に名乗るほどの人間でもねぇがな?』

「名乗って損をするのはそっちだから!」

「馨…――有栖川馨は、」



あたしはニヤリと不敵に笑い、言った。



『…WolfMoon5代目総長“黒狼”』



そう言った瞬間、朱雀の奴等は驚きに満ち溢れた。