ニコニコと笑う唯兎に、あたしは顔を歪め踵を返した。
『帰る』
「待て待て待て!冗談だ!」
ガシッと再び手首を捕まれ、歩みを止めた。
『………。』
「あー…何だ、その〜……」
放つ言葉に悩み、目を泳がせる唯兎。
…なんか、かわいいし…。
「ちょっと聞きたいことあって、さ」
『…拷問だろ?』
「だっからちげぇって!」
『……はあ。面倒くさ』
「そこをなんとか…!」
何でそこまでしてあたしを知りたいのか意味わかんねぇ。
『…あたしが“応えられる”範囲なら、ね』
「おお!さんきゅ」
あたしの言った言葉が、理解出来たのか?
答えと応えはちげぇぞ?わかってねぇなあ、朱雀の総長さん…。
「連れて来たぞー」
「おっせぇ、兎」
「ぁんだと?」
相変わらずなメンバーで、亜稀羅が少し驚いた表情をしていた。
あたしが来るとは思ってなかったんだね。
安心して、あたしから着いて来たわけじゃないから。
拉致られたから。
「さて、じゃあ本題に入ろうか」
朔弥はメガネのブリッジを上げ、パソコンとあたしの両方を見た。
…うわあ、これマジで拷問じゃね?
「転校して来たんだよね?」
『そっすね』
「前の学校は?」
『前の…?…ああ、行ってない行ってない』