赤い狼と黒い兎



医者は軽く頭を下げ、パタパタとスリッパを鳴らして去った。

それを追い掛けるように亜稀羅が寝てるベッドが運ばれる。



「亜稀羅…」



最初みたいに顔は青くない。

ちゃんと血が通ってる…。



「馨…」

「っ!」



馨が寝てるベッド…。

まるで、死んでるように、透き通ってる…。



「2回目、ね」

「ああ。前はそんなに酷くねぇけどな」

「前…?」

「腹にナイフに刺さったのよ。不可抗力だけどね」



……アイツ、そんなに生死さ迷ってるのか…。



「死ぬ気…だったのかね?」

「……」