赤い狼と黒い兎



「亜稀羅ッ!!」



慌てるような声に、バッと振り向いた。



『……、』



顔が、真っ青な亜稀羅が遠目から見えた。



『亜稀羅…』



グサリ…
生々しい音が、耳に入った。

目の前には怪しく歪められた口元。



『ガハッ……』

「か…」

「馨ーッ!!!」



じわりじわりと刺された部分から血が溢れ出す。



「余所見してるからだぜ…?馨」

『……ッ』

「亜稀羅、死んじまったな?大丈夫、すぐに会えるからな…アッチで!」



徐々に徐々に、ナイフが深く突き刺さる。



『ぐ…っ』

「ああ、それとも、亜稀羅とサヨナラしてからがいいか?」