赤い狼と黒い兎



「お久しぶりです、って言っても覚えてないですよね…」



人懐っこい笑み、八重歯、朱雀を象徴させるような赤。



『………』

「やっぱ覚えて…」

『…あっ……ああ!』



やっと思い出した。

彼の笑った顔と、笑ったら見える八重歯が大好きだった。

確か、名前が……



『こ…コタ……?』

「!、はい!!」



嬉しそうに笑う彼に、少し安堵した。

本名まではさすがに忘れてしまったが、確かあだ名は“コタ”だった。



「覚えてくれてたんすね」

『いや、半分忘れてた』

「ですよね」



そう言って笑うコタ。

昔と何一つ変わらないが、変わったとすれば身長や図体だろう。

まぁ、当たり前だけど。



「改めまして!古川虎太郎です」



にかっと笑い特徴的な八重歯を見せる。