赤い狼と黒い兎



だが男は手にナイフを持っていて、間一髪のところで避けられたが頬に切れ目が入った。



『チッ…』



男の後ろ姿だけを見つめ、すぐに深子に駆け寄った。



『おい、深子!大丈夫か!?』

「ゴホッ、ゴホ…なんとか……」

『はぁ、よかった…』



…そういえば、磨子の姿が見当たらねぇな。



『深子、磨子はどうした』

「磨子は大丈夫。…ジュース買いに行ったから」

『…そっか』



すると、なんというタイミングか磨子がジュース片手に帰って来た。



「あれ、馨ちゃん?…って、何かあったの?」

『「……はぁ」』



あたしと深子は同時に溜め息を吐き、磨子は不思議そうな顔をしていた。