赤い狼と黒い兎



びっくりしたような表情をしてあたしと向日葵を見る唯兎。



「うっせ!唯兎には教えてやんね〜し!」

「なんだと向日葵ー!」

『おい、一応病人だぞ…』

「関係ないない」

「そ!俺、今週には退院出来るっぽいよ!」



やった、とはしゃぐ向日葵にデコピンをする唯兎。

…そっか、退院出来るんだ。…よかった。



「馨?どした?」

『…どうもしてないよ。ちょっと深子たちの様子見てくるね』

「おう。気を付けろよ」

『あたしを誰だと思ってる』



ハッ!、と見下したように笑い向日葵の病室を出た。

向日葵の病室から深子たちの病室はそう遠くない。

だからすぐに着く。



『深子〜?』



ドアを開けながらそう呼び掛けた。

開けてすぐに、信じられない光景を目にした。



『!?』

「…か…お…」



上から下まで黒で覆われた男に、深子が、首を締められてる…―――



『…てめぇ、』

「チッ!」



男は深子をベッドに放り投げ、こっちに走って来た。



『逃すか…、!』