赤い狼と黒い兎



病院に来る途中、誰かに後をつけられていた。

それを唯兎は知ってか知らずか、自然とスピードが上がっていた。



『(一応、朱雀の総長やってるだけあるな…)』

「おーい馨ー」



……あれは絶対気付いてないな。

はぁ…、と小さく溜め息を吐きポケットに手を突っ込みとぼとぼ歩いた。



「よーっすひま!さっきぶり!」

「お前ケータイ忘れてったろ」

「そーそー!だから帰って来ましたよ」

「ドジな奴…」



唯兎の後ろから続くようにして入れば、向日葵の目が見開かれた。



「馨!」

『久しぶり、向日葵』



向日葵は嬉しそうに笑って目をキラキラとさせた。

もし向日葵が犬なら、契れんばかりに尻尾を振ってるだろう。

だって、今も犬の耳と尻尾が見える…。



「…あれ、お前らってそんな仲よかったか?」